*  自分史 製造業系 ( 五十歳までのワシ。 鉄工所三十二年間の想ひ出 )  *   < kujila-books ホームへ帰る >

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第 1 章  *  3 / 11 

< コマツにも有る、下請け企業のイカサマ行為 >



厳しい検査体制を敷き
不正や不良には厳罰を無慈悲に適用するコマツにも
イカサマ行為の絶えない所が、人間の業なんよ。

生きとし生ける者、例外なくイカサマの気が有るらしい。
イカサマも程度もんでな。日本人、地球的には少ない方らしい。

それでさえ、これだから、中国や韓国なんか、どでつもねえって事どす。
2008年の北京オリンピック。予算の半分を江沢民ら大幹部がネコババ。
それはまた、別のコーナーで扱います。


*     *     *






ここに書く不正行為は、ワシがこの目で見、この身で体験した事のみです。
ワシ自身の不正は、歯科医師の不正請求を別にすれば、三菱キャタピラー

相手に、ボスの開先を削らなかった事と、ブッシュの熱処理をイカサマした
事と、その二件のみ。 ワシはつまり、腕の良い旋盤工ではあっても


経営力は無く、営業力も無い。 あの業界では情けない一介の職人に過ぎな
かった。 ちゅう事なんす。

そう言う、うらみを込めて、この段は行きます。




< 材料のイカサマ。 横流し。>


金額では、、これこそ、ワシの見た最大かも知れぬ。
四十年も前の話だ。 ワシ若干二十歳。 親会社は小松 T 製作所。 1970

年代。 高度成長期の入り口だ。 (株) コマツのバケットローダーだった。
大ヒットしてね。 月産 千二百台。


今のバケットローダーと比べれば、おもちゃみたいに小型で、トラクターの前に
バケットを付けただけ ・・・ みたい代物だったが、あの当時として最先端。 

こんな便利なものが有ったのだッ ユーザーから絶大な支持を集めて、
コマツのヒット商品となった。 バケットアームは、油圧で上下する。



そのアームの基点が、問題の部品です。 部品名、ブラケット。 形から愛称
が下駄。 下駄の歯を長くして孔を開け、裏返しに置いてピンを通す。

このピンが、バケットアームの基部を支える構造です。 バケットの重量が
もろに掛かる、重要部品です。 コマツはそこに鑑みて、製鉄所に材料を特注。


S35C の鋼板。 一般には市販されて無い。 それを、わざわざ注文して、
これを使えと一次下請けに下命です。

この小松 T 製作所は、それを受けて、二次の下請けに発注しました。



 *       *       *



最初の板金工場、支給の材料を使用して問題なし。 ワシの鉄工所も図面通りに
機械加工したから、問題は一切無い。

ところがだ。 この製品がヒットして生産数が伸びた。 美味しい仕事になっ
たのだ。 すると小松 T 製作所の重役だった方。


この仕事を自分の親戚の経営する板金工場へ、振り替えた。 これが既に
いやらしい。 この重役さん、生きてれば百五歳である。

イカサマした板金工場の社長さん、八十五歳である。 ワシが既に六十一歳だか
んね。 あの頃のワシ、二十歳(はたち)の美少年だった。 笑うな入力。



板金工場の社長が何をしたか? と言うとだ。 コマツが、わざわざ特注した
材料を使わない。 それは、こっそり横流し。 代わりに韓国製の超安物の

鋼板を使用した。 するとだ。 機械加工が出来ない。 材料がペタ付いて、
正確な寸法精度が出ない。 表面の仕上がりが不良となった。


これにはワシ、悲鳴を上げた。 工具が、たちまち傷(いた)む。 一回の
加工では精度が出ないから、同じ所を二回、加工せにゃあならぬ。

これでは、生活が出来ない 親会社の、その重役に文句言ったらね。
じゃあ良いわ。 機械加工も板金工場にやらせるから。



仕事、取られちゃった。 漏れ聞く所では板金工場さん。 機械加工では
苦しんだようですが、材料の横流しの利益を考えると、そんなもの、

鼻くそです。 特注の高級鋼板と、韓国から輸入の超安物の鋼板。 その差額
は、一億や二億ではありません。



  *       *       *



見ての通り、この不正にコマツの責任は無い。 100%下請けのイカサマ。
下請けの不正行為。 問題に成らなかったから、コマツはこの不正を


見抜けなかったのだ。 ユーザーばかりが、損したと思われる。 当の板金工場
の社長さん。 息子に経営を譲って、豊かな老後。

当然小松 T 製作所の重役で親戚の方も、おこぼれに与(あず)かったでしょう。
うらやましい限りです。 ニャロメ です。



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○ 当書店の方針に従い、上記の件は (株) コマツ に申告したが、
   若い担当者、

   判りました、伝えときます。 言うたのみで、今だ、何の反応も無い。
   言って来れば、ここに追記する。



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< 哀れを誘うイカサマの例。 >


イカサマは、見つからない内が、花である。
見付かったらお仕舞いだ。 上に書いた材料の横流しの、二年も経たぬ

頃だった。 部品名は、吊(つ)り棒だ。 今の人、イメージが涌かない。
ブルドーザーの前面には、排土板(はいどばん)が付いている。


最近のブルは、油圧で動く。 排土板も油圧で上下する。
昔のブルは違ってね。 油圧シリンダーの性能が低かったから、油圧だけで

排土板を動かしてると、シリンダーが直ぐ にイカレた。
だもんで排土板の上に、アームが二本、伸びててね。 そこから吊り棒で



排土板を吊り下げてたのさ。 こんなの博物館へ行かないと見れないよ。
一台に二本。 右と左に一本づつ。 当時の日本はブルばかり。

ブルドーザーってえのは、走り回って仕事する。 パワーショベルは反対だ。
一箇所に腰を据え、地面をいじく るのが仕事だ。 日本の土木工事も、ちまちま


した工事、ばかりに成った。 と言う事だ。 コマツのブルも、今や生産の主力
は、ブラジルだかんね。 円高で海外へ押し出されてしまったのだ。

さて吊り棒だ。 長さが150センチ。 一メートル半。 直径が五センチの
鉄棒。 両端にワッカが付いて、ピンを通す穴が明いてる。



このシャフトと、両端のボスは溶接で、くっ付けるんだが。 件( く だん )の
溶接屋さん。 イカサマをした。

図面通りの溶接、手間が掛かる。 儲けが少ない。 面白くない。
そこでだ。 金物屋へ行って、針金を買って来た。



我らが日曜大工の店で見る、あの針金だぜ。 太目の奴でな。 溶接の所へ
そいつをグルグルと巻いた。 V 字型の開先の半分まで、針金を巻いた。

そこから溶接を始めた。 これだと時間は半分。 溶接材料も半分。
針金なんて安い物。 儲けが倍に成りました。


見付からなければ、万々歳 だったんですがね。
コマツの検査係り、見付けて仕舞った。

ドリルで穴を明けると、ドリルの抵抗が、途中から変わる。 おかしい。
溶接部分を、ノコで切断。 断面を目視した。



肉眼では異変が無かったそうだ。 ポンチで打って見る。 正規の溶接棒と
市販の針金だからね。 ポンチで打つと、抵抗が、明らかに違う。

分析に依頼して、不正を確定した。 それまでに納品された吊り棒は
千本である。 ユーザーが使用してた物まで、全品回収。



  *       *       *



< (株)コマツは鬼、三菱キャタピラーは観音様。>


旋盤で溶接部分を削り落とし、ちゃんとした溶接で、やり直し。 それは
良いいのさ。 でも千本だぜ。

加工賃は貰(もら)えるの? 聞いたらさ。 コマツの社員に笑われた。
文句は溶接屋へ、ねじ込んでく れッ



この千本の吊り棒、ワシがこの手で旋盤に乗せ、一円も貰わずに、不良溶接を削
り落した。 一ヶ月、掛かったよ。 完璧に、ただ働き。

難行苦行。 拷問みたい一ヶ月だった。 不正の溶接屋、修正の終わった時点
で、コマツの仕事から追放。


あそこへウチの(コマツの)仕事を出した会社は、同罪と見なす。 その会社も、
コマツから追放する。 コマツはイカサマを許さない。

三菱とは、エライ違いだ。 三菱キャタピラーの仕事が小松市へ来た時だ。
仕事を貰った連中の中には、コマツの仕事。



させて貰えない連中が、二〜三名、混じってた。 仕事を始めると、
早速イカサマを始めた。

開先を取らずに溶接する会社。 ワシも加担したから、面映(おもは
ゆ)いが、これは相手が、三菱キャタピラーだから出来たとも言える。



  *       *      *



同じ三菱キャタピラーの仕事だった。 別の下請け、図面通りの溶接では、収縮
による変形が大きくなる。 そこでイカサマ溶接。 軽く変形しない程度に溶接。

当然、強度が不足する。 ユーザーが使うと、たちまち破断。 一次下請けの
(株) 北菱、三菱キャタピラーから責任を追求され、二千万円の弁償をした。



これは谷口寛社長から、直接に聞いたものである。 そのイカサマ溶接屋、
社長は、その後、どうなさいましたか?

注意を与えた。 そして仕事は、それほど重要でない部品に変えさせた。
なるほど、なるほど。



(株) コマツのやり方と比較して下さい。 (株)北菱 は、三菱ではありません。
しかしワシには、三菱と同類に見えました。 温かいのです。

涙が出るよな、いとしい三菱です。 そんな、そんな三菱の、悪口言う奴らが、
許せませんッ

そんな気分に、成って来ませんか?



この辺が、三菱村 ( むら ) の良いところです。 ユーザーにとって良いかど
うか? は、ご自分で判断して下さい。

コマツには、絶対に、絶対に存在し無い。 うるわしい気分です。



日立建機や住友重機、その他の土木機械の製造業社の情報も書けると良い
んですがね。

以上は、視野の狭い、ワシの個人的感想だと、お断りしときます。



 *       *       *



次に書く R 工作所は、廃業してしまったので、名前を出しても良い様な
ものですが、止めましょう。

この会社の場合。 イカサマではありません。 真面目に仕事しながら、
不良品を出してしまったのです。



コマツのブルドーザーのキャタピラーでした。 キャタピラーとは、芋虫の
事。 アメリカのキャタピラー社は、さしずめ、いも虫株式会社。

このキャタピラーを、無限軌道と訳した方は、優(すぐ)れてます。
ブルは無限軌道車。 戦車なんかは、装甲の付いた無限軌道車です。



英語は意味を知らないと、手も足も出ませんが、日本語は漢字の形で、
何と無く意味が判る。

外科の手術室の天井にある無影灯だなんて、医学の知識の何も無いトウシロ
だって、字面(じずら)だけでイメージが取れます。


無影灯を医学英語で何と言うか? は忘れました。 でも無影灯の語だけは
記憶にこびりついて、離れません。

トウシロは、ヤクザの隠語で、我ら、しろうと(素人)を言います。



 *       *       *



小松市の鉄工団地に在った R 工作所でした。 コマツのブルの稼働中、キャタピ
ラーが切れました。 デズニーの漫画なら、こんな場面、お馴染みですが、

コマツの本物のブルで、これをやられたら堪らない。 コマツ挙げての対応でした。



不良キャタピラーの生産始原を求めて、完璧に対応。 海外の分も含め、良品と
交換。 さてこの費用、全体何億円?

一説には八億円? いや、それ以上? とにかく全額が R 工作所に請求されまし
た。 これは、致し方ない処置です。


不良発生の原因も、諸説紛々。 R 工作所はコマツ指定の協力工場ですから、
品質の管理は、コマツから委託され、その費用も支給されてました。

文句の付けようの無い。 R 工作所の責任です。 普通なら会社は倒産します。
R 工作所は、倒産しなかった。 自主廃業です。



こんな事が出来たのも、R 工作所のオーナーが、大資産家だったからです。
元来はクズ鉄の回収業者です。 コマツの工場に這入り、金属の回収業務を

して、莫大な資産を形成です。 R 工作所は、その余力でした。
この辺の気分が、他の製造会社と、一線を画してました。

ちなみに、クズ鉄の回収業の方は、今も金沢を中心に営業してます。



八億だか九億だか知りませんが、ポン と出して、別にどうって事
無いのですから、羨ましいです。

この例は、イカサマではありませんが、ワシの印象に強烈に残ったので
書いてみました。



 *       *       *



ワシ自身が目撃したイカサマや、耳で聞いたイカサマは、まだ有りますが、
当事者が八十歳以下は書きません。

この段では下請け会社の不正を書きましたが、次段では社員のイカサマ。
地位利用の、お小使い稼ぎ。



ワシはこれを、企業内企業行為と呼んでます。

つまり社員がですな。 下請けなんかと結託して、バックリベートを取る。
現金でなくても同じです。


ご馳走して貰う。 ついでに福沢諭吉先生を何名か、回して頂く。 その次が
抱かせて頂く。 ですが、

何を抱くのか? は、ご想像に任せます。 まさか、お地蔵様を抱くわけでも
あるまいに。



いえ、いいのですよ。 何をお抱きになろうとも。 ぽちゃぽちゃっとした柔肌
( やわはだ ) がお嫌いで、オレは硬い石のお地蔵様を抱きたいッ

とおっしゃるなら、どうぞ、どうぞ、ご自由に



 *       *       *



マルクスが仮定したように、生産条件と分配の条件が整備されれば、人間。
理想の共産人間に成れたら、本当に良いんですがね。

むしろワシ自身が、その理想の共産人間をしてんじゃ無いか? と、この頃
疑ってます。


生活費しか仕事しない。 儲けた金は全部使う。 必要が有れば、その分
だけ仕事を増やす。

玄米に、塩だけで作った梅干を乗せ。 添加物の無い本物のお味噌汁に、
お野菜を少し浮べてすすり。 肉は食べず、魚も食べず、欲も色気も無く、


ひたすら本ばかり読む毎日です。 完壁な共産主義社会の生活じゃあ
御座んせんか?

でも、これ、別名を、おしんの人生と申します。 経済が最小限まで縮む。
いけない生き方なんです。



今や、もっと稼げ もっと使え 借金してでも使えッ

の時代です。 皆様が私の生活を見習えば、日本経済は、どん底になります。



 *       *       *



企業の社員で有りながら、その地位を利用して、ご自身の金儲けに励まれる方を
見てますと、牧場の羊の問題に、帰着します。

牧場の羊は、企業の出す利益です。 その利益。 企業が取るか、社員が盗るか?
の問題なんす。



常識なら、羊を襲う狼(おおかみ)は害獣です。 鉄砲で撃ち殺すのを、良い行
為とします。

そこに知恵者が居て、狼と共謀して、羊が取られた、羊が取られたッ と
騒ぎながら、実は半分、ネコババしてたら、許せませんよね。



不正の無い、無駄のまったく無い会社は、利益から、経費と人件費を支払っ
た残りが利益です。

社員が下請けと組んで、バックリベートを取ると、その分、会社の利益は
減少します。


会社の利益は羊です。 羊を、会社が食べるか? 社員がネコババするか?
は、会社と社員の、才覚次第です。



ワシが過去に見た、全ての企業、いけない社員を抱えてました。 ただ一社、
ここには居ないッ と断言出来るのは、パナソニック。

旧、松下電器産業だけでした。 上の方は知りませんよ。 ワシらの見れる
範囲では、パナソニック。 いけない社員、居ませんでした。



ホンダ鈴鹿、うじゃうじゃ居ました。 豊田市のトヨタも、結構居ました。
石川県小松市の (株)コマツ工場。 伝説を残した方まで居ます。

小者の数なら、ホンダ以上です。 下請けの、小さい企業も、それなり、それなり
に居ました。



次段では、その内の幾つかを、見たままに書きましょう。






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