* 裏本 五十歳、歯学部へ行く。( 体験記・医療系 ) * * *   < kujila-books ホームへ帰る >

< この本の ホームへ帰る >
< 前のページへ帰る >
< 次のページへ進む >

 人生に免疫力無き方、読む事なりまッせん

第 1 章 * 2 / 5
我が29期の卒後十年目
< クラクラッ子のドジ >



わが29期の女の子の中で、
一等モテた女の子は誰かと問えば、
多数決、全員一致して、それ
クラクラッ子でやんしょ。

実に素直(すなお)な子でナ。
大した美人でも無いが、
その心根(こころね)の愛らしさにて、
恐ろしくモテた。

付き合って呉れの男、
十名を越えたのでは?

我が29期にも二名居たナ。
6年間一緒に過ごして、
付き合って呉れだから、
その魅力が知れると言うものだ。

実はワシも、彼女にクラクラした一人なのさ。


*     *     *




< ドジ踏んだ クラクラッ子 >



なぜ彼女がラクラッ子かと言えば、彼女の素直さ、余りに魅力的なん
で、彼女と話した男の子、

みんなみんなクラクラッと成りて好きに成るからさ。 そんな美人
でも無いのに。



ずん胴だし、ボインでも無いし。 個々の身体的要素は普通より、
チョッと上に過ぎないのだが、

気立ての良さとすなおさが、堪らんのだナ。



実を言うと、ワシも、彼女にクラクラッ子、してしまった。 清っぺ
(きよっぺ)じゃ無いが、私がもし男の子だったら、

絶対絶対、クラクラッ子にプロポーズすると、言わしめる程に、
こころ根の魅力的な女の子だった。



そのクラクラッ子が事も有ろうに、ドジ踏んだのさ。 それをこれ
より報告せんとす。

ホントはこんな報告じゃなしに別の文章、書きたかったよ。



   *       *       *



聞け万国のおのこ(男)ども、あれは六年次、臨床実習の最中
(さなか)であった。

ワシ何かの用事にて技巧室に居た。 直ぐ横にマーちゃんが坐って
た。 マーちゃん、レントゲンのレポート書いてた。



おしゃべりしてたら、クラクラッ子の話題が出てナ。 久治良さん、
A君を知ってますかと言うから、

A君ならワシの近くに坐ってるよと返事すれば、あの子、クラクラッ
子に付き合って呉れって言ったの、知ってますかと来た。



へええッ、A君がクラクラッ子にホの字だったのか? そいつは知ら
なかった。 ホントか、それは大ニュースだと言いつつ、

やや驚いた。 A君とクラクラッ子だなんて、喰い合せ、全く合わな
い感じ。 だけど好きに成るの、各自の勝手である。



そうかA君なんて、勉強オタクで運動不足の男の子だと思とったが、
そうか、ちゃんと青春してたのか。 ううむむ ・ ・ ・

とワシは、うなってしまった。



   *       *       *



マーちゃん、さらに言うていわく。 B君知ってますか?  ワシ、
B君もクラクラッ子かい?

そうなんです。 彼もクラクラッ子に交際申し込んで、断られてる
んです



。 ワシ、感心した。 ワシは、クラクラッ子が、アメフトだかバスケ
だか知らぬが、そこのマネージャーしてて、

複数の先輩から好きだと言われたけど、断ったと言う話である。
マーちゃん、ワシを訂正して、彼女は野球部です。



彼女が断った先輩のプロポーズ、まだまだ有るんですよと言うて、
その幾つか、話して呉れた。

ワシ、完全に呆れて、クラクラッ子の底知れぬ魔力に(魅力に)
感心したもんだ。



そうか、そんなに、モテてたのか ・ ・ ・ ううむッ。



***************************************************************



だけどね、水を刺す様だけど、ワシ、あの子には、ちょっと用心す
べきだと言いたい。

つまりだナ。 あの子を女房にした奴は、あの子が、実は物凄く
コストの掛かる女だって事、認識すべきだと言いたいのだ。



マー君、ワシの言いを理解出来ず、クラクラッ子がコストですか?
と聞く。

つまりだナ。 あのクラクラッ子、結婚したら凄いお屋敷じゃ無い
と嫌。 台所は最新式で、寝室は豪華な洋式に、



お車は高級ドイツ車以外、乗らないって子なのさ。 君、クラクラッ
子見てて、それが判るかい?

マー君、アハハハッと笑いて、かも知れませんねと同意した。



   *       *       *



実に、あのクラクラッ子は、そう言うコストの掛かる女なのだ。
そこを知らねばならんのだ。

だから貧乏人は相手にして貰え無い。 ゴツイ経済力を持った男で
ないと、クラクラッ子は来て呉れない。



あの子、実は、そんな野望を胸に秘めた女の子なのさ。
だからクラクラッ子、あんなにも好かれながら、

彼氏作らないのは、申し込んだ男たちが彼女の判断基準に達っしない
からさ。



かてて加えて彼女、そんな凄い美人でも無いのに、彼氏は相当の男前
と決めてるみたい。

ま、あれは、若さの致(いた)す思い上がりでしょうけどね。



そこでマー君、彼女、本当にそんな彼と結ばれるんでしょうかと聞く
から、そんな事はワシには判らん。

運が良けりゃ、目出度くゴールインするだろうけど、ドジ踏めば、
どうなるか、出たとこ勝負だよと言うといた。



   *       *       *



そんな調子だからクラクラッ子、明らかに処女で最終学年してたので
ある。

一体、あの子に、どんな悪魔がささやいたのだろ。 クラクラッ子
卒業間近だぞ。 その大事な大事な処女膜を、



こ、事も有ろうに、五十歳体型男に捧げて仕舞ったのさ。 そう言う
馬鹿な真似をするから、

クラクラッ子は運に見放されたのだ。 明白に自業自得である。



あれ、何かのテストの後だった。 ワシはドアを開けて廊下へ出た。
するとそこに、クラクラッ子と五十歳体型男が、

寄り添って立って居た。 その寄り添い方、肉体関係した男女のみ
のする、それだった。

ワシ、むむうッと唸(うなっ)た。



クラクラッ子、キャッと悲鳴を上げ、弾(はじ)かれた様に、その場
を去った。

後に残された五十歳体型男、これ以上不愉快な顔は無いと言う顔して
ワシを見たのだった。



こんな事が、何と立て続けに、二度も起ったのだ。 その都度クラ
クラッ子、キャッと言うて逃げ、

その場に残された五十歳体型男、ワシを、恨(うら)めし気に睨む
(にらむ)のだった。



これ五十歳体型男、運の無い証拠である。 あの不愉快極まり無き
表情は、用心しないと癌を発症する。



***************************************************************



卒後六年目だったかに、卒業者名簿が送られて来た。 クラクラッ
子の所、そのままである。

ワシ、放って置けず、早速彼女に手紙した。 この辺がおせっかい
屋の本領と言うべし。



コラッ、クラクラッ子の馬鹿と、ワシはまず書いた。 オメーさんは
独身で生きてけるタイプじゃ無かろ。

金持ちの男に愛される豊かな生活で無いと、テメーは生存出来ない
女だ。



今からでも遅く無い。 五十歳体型男のもとへ行け。 行って言う
のだ。

あなたに処女捧げたんだから後の面倒も見てって。




これをするか、しないかで、テメーの人生は天と地だぞ。 五十歳
体型男は醜男でチビ助だけど。

金は持ってる。 男前は諦めろ。 テメーも三十代なかばだ。
ああのこうのと言うとれる年齢か。



特攻精神にて、五十歳体型男の胸に飛び込めッ



と書いてポストした。



**************************************************************



この五十歳体型男、大阪は私鉄沿線の有力駅の駅前ビルを所有する
歯科医師の息子なんである。

父親の歯科医は、暇つぶし。 収入の太宗はビルの家賃収入だ。
月の仕送り、45万。



大学では夫婦者の住めるアパートにましまして、晩飯は近所の割烹
料亭へ。 毎晩毎晩、美味美酒するから、

まだ二十代前半なのに、五十歳体型男とは成りおおしたのだ。
その内、どうか成るぜ。



   *       *       *



この男、大講義室ではワシの後ろに坐ってた。 ある日、並んで
坐ってた末の字に言うのだった。

ウチのパパがさ、ビルの一階に有るコンビ二に、貸すんじゃ無かった
って悔やむのさ。



駅に面してるだろ。 死ぬ程儲かってるらし。 貸さずに自分の
経営でコンビ二してたら、

その店だけで、ビル全体の家賃が出てたのにって、残念がる事、
しきりなのさ。



それ聞いてた末の字、フフンと、鼻であしらって居った。 ワシも
馬鹿らしくて聞くの止めた。



その後、こんな話もしてた。 クラクラッ子がさ、昨夜デンワして
来てさ。 晩御飯を一緒しませんかと言うんだ。

末の字、ふうん、で行ったのか?



当然だろ。



   *       *       *



この話題はしかし、二度と出なかった。 つまりクラクラッ子が、
処女の捨て所に、自主的に、五十歳体型男を選んだって事さ。

だから罪は五十歳体型男には無い。 クラクラッ子に有る。



クラクラッ子は、これから如何(どう)生きる積りだろ。 退勢を
挽回出来るのか?

それらは全て、クラクラッ子の腕次第だ。



将来、何か進展が有れば、ここに記す。





**************************************************************
**************************************************************

あんま早く終わったので、雑文を入れる。

**************************************************************
**************************************************************





< 女の生き方、その 1 >



その女の名を、A子とす。 大女( おおおんな )でナ。 身長
ワシ(170センチ)より高く、肉付き豊満と言うべし。

グラマーと言えば言えぬ事もなかろが、あんな巨体なのに、結構
高めのハイヒール。



離れて見ると、足元、いささか危なっかしい感じ。 ワシ、この子に
何だよ、このオッサンは、

と言う視線にて、学食の階段から見下された事あった。 あのやな
視線、記憶にこびり付いて離れんのだ。

恐ろしいものだ。



さてこのA子、入学直後の、あのいわく付きの五月の連休コンペで、
仲間うちの乱痴気騒ぎした。

酔っ払って雑魚寝した隣の男が、B太だた。 B太も大柄な男
(おのこ)でナ。 この二人、その場にて出来ちまったそうだ。

雑魚寝だろ、仲間が横で寝てるんだぜ。



大男(おとこ)と大女(おんな)。 プロレスまがいの派手な縺れ
合いだったのでしょ。

それ以来、二人の関係は、29期の公認。 誰知らぬ者無しだから、
公明正大には違い無いが、結論だけ先に言うと、



卒業して、ライセンス取って、別々の人生へと、お進みなされた。
じゃあ、あの六年間は、何だったの?

夫婦と変わり無い六年間だぜ。



大学時代の六年間は、青春時代のド真中だ。 オマンコしたくて
したくて、堪らん年代のド真ん中の六年間だ。

その性欲を完璧に満たしといて、バイバイと手を振って、サラッと
後腐れ無く別れ行く、その神経、ワシには理解し難い。



   *       *       *



人生は、各自の自由でしょうが、本に有るよな、ああ言う男と女の
生き方を、眼前に目撃して見ると、

やっぱ、如何なものかと言わざるを得ぬ。



しかも我らは歯科医師だ。 他の一般学部と収入の桁が違う。
このA子、卒業して四年目。

ある歯科分院の分院長で、インターネットにお面が出た。 ニッコと
微笑んだ表情は、様(さま)には成っとるが、

年収、あの感じなら一千万弱でしょうが、



三十、そこそこの女が、この収入だろ。 歯科医師の社会的声望が
有るしな。

人妻なんてカッタルイ事、してられますかと成るらし。 旦那の
両親に気を使うなんて、想像しただけで、

身の毛がよだつそうだ。



これだけの収入が有れば、あたしは、あたしの好きな道を生きると
言うて、何処が悪い?

その様に生きたから、ちゅうて、何が問題なんですかと開き直られて
諸君ら、何と返事する?



独身ならセックスライフの設計も自由自在だ。 素敵なストーリーで
夢を現実虚構的に描いて生きるのも自由だ。

結婚なんて囚人の足かせです。 産みたきゃ赤ちゃんを産んだって
良いのです。



実際、明海大歯(は)には、そんな女の先生も居ました。 誰も
何も言いません。

そんな時代です。 このA子センセも、自由な生活設計で生きて
居られるんでしょ。

それに付いて、誰が何を言えるのですか。 何も言えません。



ですから、こうなれば、歯学生時代に恋人作り、おまんこ、ヤリ捲
(まく)りこそ、正しい人生航路とは成るのです。



   *       *       *



ワシ六年次の臨床実習で、その彼氏たるB太に、直接聞いた事有る。
君ら卒業したら、当然、結婚でしょ?

するとB太、しませんよと、にべも無い。



ボクら、それぞれの人生が有るんだし、相手の進路をこっち向きに
する権利なんて、お互い、有りませんからね。

彼女は彼女の道を行くし、ボクはボクの道を行く。 それで良いの
では無いでしょうか?




久治良さんは、ボクらの事で、どうしてそんな噛み付き方をするん
ですか? ボクらは悪い事、何もしてませんよ。

彼女も楽しかったし、ボクも気持ち良かったし、それで良いじゃあ
有りませんか。 何処がいけないんですか?



ワシ、グッと詰まりながらも言うたった。 だけどな君らの六年間、
夫婦みたいに自由にセックスしてたろ。

それを横で見てると、そんな別れ方が理解し難い。 特に団塊の
オッサンにはな。



君らのその六年間を、どう解釈すれば良いのだ?  B太困った様に
知りませんよ。

お互い気持ち良かったんですから、それで良いのじゃ無いでしょう
か?  それで全部ですよ。 解釈なんて無いですよ。



ワシ、B太を追い詰めても仕方無いんで、そんなものかねえと言うて
この会話を、うやむやに、終わらせた。



   *       *       *



あれは国試も終わり、卒業式の後の謝恩会の会場だった。 会場へ
続く長い長い廊下だった。

A子とB太が、如何にも親しげに、肩を並べて歩いてた。 ワシ
背後からそれを眺めつつ、名状し難い気分がした。



あの後、朝まで、最後の一戦したのか? 夜明けのコーヒーなんぞ
啜り(すすり)つつ、二人だけの卒業式でも、

やらかしたのか?



ワシの感覚では、調子ええなああ〜と、嘆息が出るんだけど。
やっぱワシの方が、

時代遅れなんでしょうなあ。



   *       *      *



あれは何年次だったか。 しかと記憶せぬが、我ら29期にはザキが
二人居てナ。

二人とも口腔外科へ行ったから、ややこしい。 双子座じゃ無しの
岡山県のザキだった。

そいつがこのA子に、お説教を垂れてやがんのよ。



君もB太の彼女やってんだから、もっと彼女らしい振る舞いをしな
きゃ駄目だよなんて、言ってやがんのよ。

ワシ、横で聞いてて、そんな説教垂れる資格、テメ〜に有るかッ
と言いたかった。



その風景たるや、チンピラがチンピラ捕(つかま)えて説教してる
みたいだったからさ。

こんな風に学年公認の恋人して、やりまくりの六年間。 卒業して
バイバイは、何処かやっぱ、可笑しく無いだろうか?

と思うのが、ワシの遅れてる証拠なんでしょ。



   *       *       *



こんな風に歯学部では大学時代。 おまんこ、思いのままに享受
して、卒後は自由に高収入の人生を楽しむのが、

ひとつのコースらしい。 この手が少なからず居る。 A子を書い
たけど、類似が、二〜三で終わら無いのだナ。



A子みたい生き方なら、彼氏は自由だ。 彼氏、結婚して子供居たっ
て関係無し。

映画のヒロインみたい生活が出来る。 ホント、映画みたい人生だ。
そんなのが我が29期に複数人、御座る。



ま、上手くやれよと言うて置こう。



**************************************************************



上記のA子とB太は、双方合意の上の出来事だから、切れ際がスパッ
として、バイバイも後腐れ無し。

だけんども、C子とD男は、見ててヤバかった。 五年次の頃だ。
D男に聞いたのだ。



君、彼女とは結婚するの?  D男、しませんよお。 ワシ、少々
驚いた。 だけんども彼女は君と、結婚する口ぶりだぜ。

D男は返事しなかった。 やや置いてから、彼女とは別れますと
つぶやく様に言うた。



あれは国試が終わった後だった。 彼らは付き合い始めた最初から、
車に同乗して通学してた。

その時も同じ車で大学だ。 駐車場から大学までの道すがら、二人は
何時もと変わり無い様子で肩を並べて歩いてた。



ワシそれを眺めつつ、大丈夫かしらんと心配したけど、何事も起ら
なかった。

目出度しと言うべきか?



D男、苦味走った中々の男前である。 なのにC子、不釣合いに平凡
な、色の浅黒い女の子。

肉体的にも、むしろ劣勢と言うべし。 あれではゴールインせんなあ
と、ワシ、嘆息しとったんではあるが、



やっぱ添い遂げなかった。 見てても縁の無いのが明白なカップル
だった。

だけんどもやりまくってた事は事実である。 こんなのを何と言えば
良いのだろ?



**************************************************************



これがE子と彼氏となると、少々ヤバかった。 諸君らは石川達三の
(青春の蹉跌)なる本を知っとるか?

ワシ、本より先に映画を観た。 これが目茶面白くてナ。 あらすじ
を言えば、大学のエリート学生、



性欲処理用に、肉体的には優勢なれど、オツム、左程でも無き女と
遊んでた。

卒業が迫り、縁切りの頃だ。 女、妊娠したなんぞ言うて、結婚を
迫った。



エリート学生、処置に困りて女を始末しちゃったのさ。 捕まって
刑事の言うには、

ありゃ君の子じゃ無かったぜ。 もうチョッと慎重に対応して欲し
かったなと言う落ちで終わる、物語さ。



   *       *       *



E子の彼氏は、学外の男である。 学生か一般社会人か、ワシは
知らぬ。

問題は彼氏、E子を猛烈に愛して結婚を求めた事だ。 何でも専業
主夫に成ると言うたそうだから。



E子との馴れ初めは、一年次の五月連休らし。 部活のコンペで、
他大学の学生と騒いだ時以来と聞くから、

これも約六年間である。



本人、あっけらかんとして、やりまくってます、言うとったから、
やりまくっとったんでしょ。

E子、穴、ガバガバ。



   *       *       *



こんな調子で五年次まで来たが、E子、いよいよ卒業が指呼の間だ。
その頃は、別れ話ばかし。

会う度に別れましょ別れましょと言いながら、オマンコしてんだから
これまた調子、良くは無いか?



何か起るんじゃ無いかと心配しつつも興味深々で居たが、別に何も
起らなかった。

ある学生いわく、最近は別れてもショックなんて無いですよ。 案外
みんな、ケロッとして別れてます。



なるほど、そんなもの、なんでしょうな。 だけんども、ワシ一人
ハラハラドキドキしてたのも事実。

何か起れば面白かったと言えば叱られるけど、何も起らないのも
如何なものかと書いてしまうんだナ。



**************************************************************



ワシもその一人だけど、ガラの悪いセンセが居(お)ってナ。 独身
で高収入してる女の先生見ると、

あのセンセ、彼氏、居るのかな? セックスライフは、どうしてんで
しょうかなんて、直ぐに下卑た話題に堕(おち)る。



あるセンセ、29期じゃ無いけど、明海大歯(は)の出身だ。
矯正歯科なんよ。

矯正歯科と聞くと、我ら歯科医師、高収入を連想す。



自宅マンションで患者診つつ、契約した歯科医院を週一回のペースで
巡回しつつ、矯正歯科して居られる。

年収は正確には判らんが、ま、二千万は越えてるでしょ。 女一人、
三十代後半だぜ。



二千万の年収で、あの顔で、あの身体なら、あのセンセの女の歓びを
満たしてるのは誰でしょ?

と言うよな話題に成りさがります。 ヒマだから。 本当に夜は、
どうなすっておられるのでしょうか?

心配です。



   *       *       *



この点、表本にも書いた、大学の臨床なさって居られる、B子セン
セの例は、参考です。

B子センセ、レッキとした彼氏、御在います。 某大学歯学部の
先生です。



彼はB子センセの大学院の先輩。 と言う事は、B子センセが明海大
歯を卒業して行った先の大学院の先輩先生。

知り合って、もう十数年です。



B子センセいわく、彼は結婚したいらしいけど、わたし、彼のお母
さんが苦手(にがて)なの。

あんな人を、お母さまと呼びたくない。 それだけ。



それに今みたい、して欲しいと思った時は電話して、ランデブーして
ホテルで食事して、

そのまま一発、して貰う方が、切れが良いのじゃない?



結婚なんか、してご覧なさいよ。 周囲に気を付けなきゃ駄目に成る
し、彼の御両親や親戚を相手に、

妻としての振る舞いが要求されるでしょ。 それ考えただけで結婚
なんて、するもんじゃ無いって思うのよ。



今みたいな関係が、もう十五年だけど、別に不都合無いわ。 彼は
子供、欲しいらしいけど、

子供作ったら育児、有るしね。 育児なんかで時間取られたら、あた
しの時間が無くなちゃうわ。

そしたらあたし、気が狂うわ。



だからわたしは、今のままで良いの。 彼が別れたいって言えば、
OKよ。

好きな女の人、見付けて結婚して、子供作りたけりゃ作れば良い
じゃない。 彼の自由でしょ。



わたしはわたしの、好きな生き方をするって言うだけなの。 それ
だけよ。

ホントにそれだけ。



   *       *       *



こんな生き方の(女の)センセが、結構居られるのが歯学部の特徴
でやんす。

こんな時代ですから、腕の良い(男の)センセなら、たんまりと
良い思いが出来るのです。

腕が良くないと駄目ですが。



**************************************************************
**************************************************************



< 理の子先生は、結婚しなかった。>



同級生が付き合ってるのを見てて、あのカップルは絶対にゴールイン
すると、そんな感じの同級生の中で、

理の子センセ、絶対に結婚すると、本人も周りも見てたのに、結婚
しなかった。



理の子センセ、美人である。 スラッとして清潔そうな日本的美人。
微笑むと白い歯がこぼれて、

それが又、得(え)も言われぬ程ステキで、本人も自覚してるから、
年中微笑んで居られた。



彼氏の方が熱烈で、そりゃ当然でしょ。 あんな美人だったら、ワシ
でもイカレますよ。

理の子センセの次の学籍番号のフミカセンセ、ワシに言うた。
あのふたり、見てると大変なのよ。



実習してるでしょ。 彼から携帯が来て玄関で待ってるから来いっ
て言うのよ。

そんなの、行けるわけ無いでしょ。 すると彼が機嫌じゃ無いのよ。
あれ見てると彼氏持つのも、

大変だと思うわね。



彼氏だって実習経験したんだから、彼女の事情が分りそうなものだ
けど、それが分らない。

まあ彼氏の自分勝手ね。 あれじゃ理の子ちゃん可愛そう。 結局
破局しちゃった。



もう理の子ちゃん、彼氏なんてコリゴリだわって、ぶつくさ、小言
(こごと)なのよ。

もうあれね、歯科医師止めて奥さん専業に成らなきゃ、駄目みたい。
ホント、難しいわね。



なある程、でやんす。



**************************************************************
**************************************************************



< 出席カード、取りに来い事件 >



これは実にけしからん事件でナ。 事件首謀者には深い反省を求める
ものであある。

我ら大講義室で教授より、講義を受ける。 その時学生の出欠を
取る。 講座の新卒先生が出席カードを机毎(ごと)に配布して、

学生に記名させる。



かく言うワシも、大学に残りて歯内療法学講座に所属した新卒センセ
だったから、講師の先生なんかの講義では、

出席カードを机ごとに配りて記名させとった。



階段構造の大講義室、教授から見れば、中央に八人用の長机の列が
有って、左右には五人づつ坐れる長机の列の、

三列構造に成っておる。 ちなみに女子学生は、おおむね教授から
見て、左側。



すると男子学生は、中央列後方から右側に坐る事と成る。 余談
なれど後列三行をデスシート、言いましてナ。

六年次留年と、国家試験の浪人組は、たいていそこから発生す。
だから坐るなって言うのですが、

言っても言っても坐る学生が居て、案の定、留年しとります。



   *       *       *



こノ事件は我ら29期がまだ学生の頃、発生したものだ。 だいたい
中央長机の列は、講義する教授の真ん前だから、

坐る者が少ない。 わずかに女の子数名が、左側に偏在して坐って
おった。



そこへ新卒のセンセが、出席カードを配布すると、記名した女の子、
次が居ない。

立って机の反対側へ、運ばにゃならん。



この女の子の名を仮に、D子とす。 反対側まで運ぶのが面倒なんで
テメーの机の横へ、出席カードをパンと置いて、

取りに来い、するのだ。



すると腹立てて、見えない振りして集めないセンセ、居られる。
かと思うと、ワザワザ長机の間を、身体を横にして、

取りに来られるセンセも有って、千差万別だ。




不思議な事に、無視して取らない先生、わし鼻。 鼻の先の尖った
先生。

明らかに不快を示しつつ、講義室を出て行かる。 逆に鼻の先の丸い
先生、横着な出席カード、わざわざ取りに行かる。



骨相言うものは、おもろいもんやな〜と感心して、
ワシ、見とった。



   *       *       *



これだけなら、ここに書かなかったと思う。 許し難い事件が有っ
たのだ。 それは五年次、外科学の講義だった。

外科学は医学部の講義である。 近所の埼玉医科大学の外科から講師
の先生が来られて講義する。



お名前を北郷先生だったか詫摩先生だったか、はたまた御郷先生だっ
たか忘れたが、

とにかくスポーツマンタイプ、同性のワシでさえ、良い男やなあ〜と
ホレボレしたよな 仁(じん)じゃった。



そしたらよ。 いつもは出席カード、取りに来いのD子がよ。 その
時だけ、

出席カード手に持ちて、まるで、私って、こんなにも丁寧な娘なん
ですよと言わぬばかりに、



しなを作りながら、長机の反対側まで出席カード置きに行ったのよ。
その余りの調子の良さに、

流石のワシも、開いた口、塞がらなかった。





よくもまあ〜、そこまでやれるもんだと、感心しちまった。 どんな
神経、しとるのじゃい。

さて講義は終了した。 するとD子、さっそく黒板の前へ行って、
先生とおしゃべりだ。



だけど残念でした。 あんな男前の先生が独身の筈、無いでしょ。
結婚してて子供まで有った。



するとどうだ。 次の週からの先生の講義の出席カード、またもや
以前の如く、坐ってる机の横へ、ペタンして、

取りに来いだ。 大変な女の子じゃわいと、ワシ、舌を巻いた。



   *       *       *



このD子、今だに結婚しとらん。 在学中は彼氏が出来なかった。
だけど、そんなの当然でしょ。 

あそこまで徹底して横着なら、人生全体が、そんなものですよ。



それにしても、よくぞまあ、あそこまで横着に成れますねと、ワシ
感心した。

D子は彼氏彼氏と、相当に運動されてましたが、彼氏を探す前に、
ご自分の、



人を舐(なめ)たよな態度を修正するのが先では無いでしょうか?
調子の良いとこだけ上手に振舞っても、人は見抜きます。

早い話、このワシが、呆(あきれ)てるじゃないですか。



ワシが呆れたからには、男と言う男は見抜いてます。 あなたに
皆が呆れてるのですよ。

違いますか?  D子しゃん?











*       *       *


< 前のページへ帰る >  *  < 次のページへ進む >

< この本の ホームへ帰る >


< kujila-books ホームへ帰る >



* 


<  kujila-books.com  >