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第　六　章　*　３　/　４　 ＜　モーゼの十戒、ならぬ、歯学生の為の、十戒　＞

＜　坂下教授は、神か？　モーゼか？　我らに向かいて、十戒を、ぶった　＞ 預言者モーゼならぬ、我が歯学部、第二口腔外科、坂下教授。　卒業間近か の我らに向かいて、歯学生の為の十戒、どたまわれた。（失礼、訂正） のたまわれた！ 時、あたかも盛夏である。　平成十四年七月であった。　格調高きその教え に、諸君。　耳を傾けよう。　教授、まさか救世主でも、あるまいが？ 十戒。　聞く価値は、ある（はず、なんだが）。 　*　　　　　　*　　　　　　* ＜　坂下教授、盛大に、ぶつ！　＞ ボク、今から君らの為に、歯科医師に成ってから守って欲しい、十のいさ め、言うけど、本当に守ってよ！　いいねっ！ 第一条は、衛生士、並びに助手の女の子に、手を出しちゃああ、いかん！ 学生の一部、歯を剥き出して、早くもニタ付いた。 教授、すましたもので。　本気なら良いんだよ。　でもね、 嫁さん、すでに居るのに、スタッフの女の子に手を出す先生、居ない訳で も無いっ！ ボクわああ、そりゃあ、いかんぞなもし！　と、言っとるんだよ！ 次、第二条。　患者を殺すな！　の一語に、学生、大爆笑。 君ら笑うけどね、講義でも言ったと思うけど毎年、診療が元で、二十人から 三十人の患者、死んでるんだよ。　ボク、敢えて死んだと言ったが、患者 から言えば、殺された、だよ。　一人目は、許されるかも知れん。　も一人 殺してみろ！　ボク知らないからな！ 学生、また笑った。 第三条、　解らん処には、手を、出さない！　　専門機関へ送れっ！ ボク、講義で口、酸っぱくなる程、言った。　ガンを歯周病と間違えて、 いじったら、お仕舞いだよ。　ヤバイ抜歯には気を付けろ。　その他、 諸々の危険に、迂闊に手を出すな！　へましてボクらに後始末、 させんなよ！ 第四条、　患者を口説くなよ。　　学生、ニヤニヤした。 言っとくけど、治療はお見合いじゃ無いからねっ！　に、学生、大爆笑。 笑うなよ。　ボク、本気だぜ。 本学を見ても判るように、先生、衛生士との結婚、多い。　患者との結婚は、 少ない。　でも開業医では、結構多い。 悪い歯科医師、結婚してるのに口説く。　君ら、真似、すんなよっ！ 学生の一人、ハァーイ、分りました！　　に、講義室、大爆笑。 教授、苦笑して、頭掻いた。 第五条、　技工所に、値下げばかり、言うなよ！ こんな先生、結構多いんだ。　最期、我が身に帰って来るからね。 そうだ、ワシもそんな先生、見た事ある。　値下げが或るレベルを切ると技工 所。　緩い（ゆるい）技工物、持って来る様に成る。 いわゆる、ガバガバの技工物。 ワシもそんな技工物、患者にセットした事あるが、嫌なもんだった。　あんな 技工物、お断りだよ。 なぜ、ガバガバにするのか？　それは修正の手間、省けるからだ。 ピッタシの技工物、合わせるのに手間掛かる。　だけど患者はそんな事、 判らんだろ。 良心的な歯科医院、教えたい位だ。　技工物を値切る歯科医院、これも、教え たい。 第六条、　金のことばかり、考えるなよ。　金、金、金の先生、結構居る 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　からなあ。 第七条、　保険の患者、粗末に扱う先生、居るけど、君ら、差別しちゃい 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　かんよ。 第八条、　高い治療、自費の治療、そんなものばかり、追い求めるな！ 第九条、　毎晩、毎晩、飲みに出るなよ。 あれ、癖になるんよ。　自宅で晩ご飯食べるの、年に二、三回の先生、ボク 何人も知っている。　そんな先生、時計が六時回ると、尻がソワソワし出 すから、直ぐ判る。　そんな先生に、良い治療、出来ないぞ。 第十条、　週末はゴルフばかり、するんじゃ無いぞ！ この時一人の学生、ボクします。　と言ったんで、講義室、大爆笑。 教授、学生の笑い声の静まるのを待って、言った。 君ら少しで良い。　せめてチョット位、毎晩、勉強してよ、お願いだから。 以上で教授の諌め（いさめ）、十か条が終わった。　我ら学生、確かに、 承り候（うけたまわり、そうろう）。 　*　　　　　　*　　　　　　* 第七条の自費診療。　世の中の景気、良くないと、駄目だね。　１９９０ 年のバブルの頃、保険の患者なんてお断り、ウチは自費しか、いたしませ んの先生、かなり居た。　特に大都市近辺。 バブル弾けると、自費の患者、激減、自費、オンリイーの歯科医院、かなり 倒産した。　２００７年のアメリカ発、サブプライム問題。　世界の経済を 暴落させた。　ワシの行っとる診療でも、２００８年、自費が、五分の一に まで、落ちた。 歯科医師と話してて、ワシ、常に思う。　歯科医師は、世の中の、経済を 知らぬ。　一般の経済学は、知らなくとも。　歯科医師の為の経済学。 世の中の景気、良くないと、歯科医師の収入。　ガクンと落ちる。　歯科医 師から見た、経済学の必要性。　２００８年。　サブプライム問題の年。 痛感するなあ。 　*　　　　　　*　　　　　　* ＜　２００８年。　歯科の、訪問診療してて、思う事　＞ 考えると変なんだ。　訪問診療の患者、六十五歳以上。　自力で病院へ行け ない人。　仕事してない、年金の人だから、サブプライムも、世界の暴落も 関係ないはずなのに、世の中の気分が下火になると、自費は止めて、保険 でお願いしますと、なっちまう。　気分は恐ろしいよ。 またまた蛇足だけれど、訪問診療（以下、訪診）料金の一割、自己負担だ。 だけど、この領収書を、市役所へ持参すれば、全額、払い戻しになる。 つまり訪診は、ただ、なのだ。 このただは、絶対に、良くない！ 公明党や共産党が、善政の一つに、この、診療費の無料化を言っておるが、 これ一見善政、実は医療と、医療モラルを崩壊させる、悪政なのだ。 結果が、二十年後に顕在化する、やっかいで、良くない制度だ。 診療費の無料化は、必ず、医師、歯科医師の、モラルハザードを起こす！ ついでに、患者のモラルも、ハザードする。 医師（歯科医師）と、患者が、諸共に、悪乗り、するのだ！ その結果、どうなるか？　と言うと、医師と歯科医師が、ゴッソリと儲ける。 国家の医療財政が、破綻する。 本当に医療費の必要な、弱い患者が、泣きを見るんじゃ。　病院へ、年寄り が、歩いて行く。　病院のマイクロバスに、乗って行く。 息子や娘の車で、送ってもらう。 これみんな、強い老人の、行動じゃ。　体力的、経済的、家族的に、強い老 人の行動なんよ。 本当に弱い老人。　病院へも行けない。　強い老人が、医療費の無料化に、 悪乗りして、国家の医療費。　食い潰したのが、今の姿じゃ、ないのか？ 　*　　　　　　*　　　　　　* 教育も似ている。　お母さんの干渉のし過ぎ、しまったと思うのは、二十 年後。　干渉してる時は、良い事してる積り。　その時は判らんのだ。 失敗、二十年後に判るから、始末が悪い。　老人の医療の無料化、あれ位 医療を駄目にしたものは、無いのだぞ。　これ、日野原重明先生の説。 詳しくは別の場所に、書かねばならん。　日野原重明先生の本を、紹介する。 ワシは、例によって、偉い先生の、受け売り。　でもね、調べて見ると、た いていのアイデア。　誰かが、過去に、書いておるよ。 ワシの書店では、先人の知恵。　大いに紹介する、積りだ！ 　*　　　　　　*　　　　　　* ＜　歯科の、訪問診療を、受けておられる方へ　＞ ここでは訪問診療の、見方、判断の仕方を、一つ、書く。 先生が印象を取る時、印象剤が何か？　見て欲しい。　インレーや金冠は 精密印象が必要だ。　なのに訪診、アルジネート印象。 アルジネート印象いうたら、スナップ印象、概形（がいけい、大体の形） 印象じゃ。　こんな概形印象で、ピッタシの技工物、出来まっかいな。 ワシ、新卒の年。　患者宅へ行って、これセットして来い。　言われて、 全部鋳造冠（いわゆる金冠だ）を、渡された。 出かけ様とすると、女の先生、ワシに言うのよ。　試着（しちゃく）してね、 完全に一回転したら、持って帰りなさい。　どっかで止まったら、構わない から、そのままセット、しちゃいなさい。 技工物、患者の口の中で、ガバガバだった。　三分の二、回転した。　どうし たかって？ 当然、そのまま、セメント塗って、セットして来たよ。　持ち帰ったりして 見ろ。　このおっさん、正直馬鹿ね、と、笑われる、だけだ。 アルジネートみたいな、いい加減の印象剤で、印象を取って、しかも、だ。 その印象物。　水を入れた容器に、ドブンして、車で二時間揺らして、それか ら女の子。　適当に練った石膏を、流し込む。　全部のプロセス、いかさま。 こうして、恐ろしい、ガバガバの技工物。　患者の口に、入る訳だ。 ワシが患者なら、そんな技工物。　絶対に、お断り！　そんな技工物を、患者 にセットするって、恐ろしい事、なんだけど。　我ら、歯科医師、別にどおっ て事も無く、セットしとるのは、実に、大変な事、なんだがな。 これをシリコン印象剤ですると、年間。　患者数にも依るが、四十万円以上 の経費が、掛かる。　アルジネートなら、年間、一万円、行かない。 つまり、その分、儲けが減るって訳（わけ）だ。　良心的に成って、シリコン 使うと、院長が、恐ろしい顔で。　止めろっ！　怒鳴りつけて来る。 　*　　　　　　*　　　　　　* 訪診の患者さん、またはご家族の方。　歯科医師がアルジネートで印象なら、 先生の所は、アルジですか。　それじゃあ、さぞかし、ピッタリの技工物が、 出来ますわよね。　ホホホッ！　と、いやみ、たっぷりに、笑って下さい。 さもなくば、ガバガバの技工物。　口の中に、セットされますよ。 でも、これを言える方。　心の臓が、相当に、お強い方でないと、無理だわ ねええ。 ＜　ウチの大学院の、英語の入試テスト。　の真相　＞ 過去、このテストで、不合格の人、居たんかしら？　受けた学生、常に、 全員合格。　うちの大学院の、入学テストは、英語、しか無い。 これは、五年次から受けられるんで、ワシ、その五年次に、申請した。 行ってみると同級生、二十名ばかし。　六年生が同じ数。 教室は、一杯だった。　問題は、千字足らずの英文、翻訳するだけ。　早い人 時間が、余ってしまう。　辞書の持ち込み、オーケーながら。 電子辞書は、ご法度。　事前に申請すれば、過去の問題が配布されるんで、 大学時代の様な、えこひいきは、無し。 だいたい、全員合格だから、えこひいき、意味が無い。　見てると試験会場に ゴツイ英和辞書。　何冊も小脇に抱えた学生が、入って来た。 事前の勉強、しとらん（してない）証拠だ。 暑さ十センチの歯科学、英和辞典だとう？　こいつ、アホか！　ワシ、普通の コンサイス英和辞典だけ。 予習で、過去問見れば、そんなんで、良いのだ。　難しい専門英語。　テスト 用紙の欄外に、日本語訳、付いとるやないか。　ゴツイ辞典の、お兄ちゃん。 過去問、見とらん、証拠だ。　せめて、その位の準備。　して来いよ。 ある学生、大学院入試、英語テストと聞いただけで、高価な歯科医学英和 辞書。　買ってしまったのが居たが、買うんじゃなかったと、後悔してた。 解答用紙を回収の折、ゴツイ辞書の君（きみ）の答案、チラと見ると、翻訳に なってなかったぞ。　でも大丈夫、大学院、入試担当の教授が言うもんね。 何か書いてあれば、何とかします。 でもね。　ハンバーグの作り方とか、マーボ豆腐の美味しい店の事なんか、 書かないでよね。　そんな人は、助けないよ。 しかしだ。　最近の大学院、入試英語。　落第する奴が、出てきた。 余りにユルユルの、全員合格なもんだから、大学が締めた（しめた）んかも 知れん。 それとも、例によっての、投書かな？　我が、明海大歯学部、この手の投書。 やたら多いので、有名なんは、諸君。　知ってたか？ ワシの、この本なんかも、その、流れかも、知れんのだぞ！ ＜　またまた年寄りの愚痴。　同じ話の蒸し返し　＞ 今だに判らんのは、大学へ来てだ。　講義一切聴かず。　マンガ読んでるか 寝てた学生の。　六年間、ノート一回も取らず。　配布のプリント 講義が終われば、ゴミ箱へポイ。 こんな学生が、留年もせず、卒業して国家試験。　一発でパス。　けしからん 事に、この中から、大学院、歯学博士に成っちまう者まで、居るちゅう事だ！ 大学院は四年間で、こんなアホでも、博士になれるのだ！ これなら、うちの、一太郎でも、博士だぜ！ ワシ、悔しいから言ってやったのよ。　君らのは、ハカセやのうて、点々の 付いた、バカセじゃよってね。 しかも、こんな連中にも、だよ。　会えば先生と、言わにゃならん！ ワシ、これが苦痛でねえ。 なんで、あんなんが先生なんじゃ！　と、つい、思ってしまう。　歯科医師な んて、こんな具合に、学費さえ有れば、誰でも成れます！ 金の無い人。　チョット無理。　努力した学生は良いんだ。　問題は、講義中、 寝てばかりで。　六年間で、マンガの本を、たっぷり、読みました！ の手合いが、かくも簡単に先生。　どころか、点々の付いた、博士にさえ 成れる歯科医学って、一体、何なのか？　ちゅう事だ。 ある教授の冗談、では無いが、国家的に、大学院入学、資格、検定試験。 実施すべき、かも。　高校程度の化学も、物理も、生物も、数学も知らないで 大学院生？　歯学博士？ 亀の子の何んたるか？　も、知らんのが、なんで、歯学博士、なんじゃ？ 　*　　　　　　*　　　　　　* 以上は、同じ話の蒸し返しだが、臨床に出ると、この考えが、変わるのね。　臨 床、言う所は、どうやら、別の世界らしい。 そこでは、むしろ、サボり、まくりで、ライセンス取った先生の方が、 流行ったり（はやったり）する。 あれ見てると、ある意味、大学で、アホしとった学生の方が、正しい生き方に、 成っちまうんよ。 人間の世界は、これだから困るのだ。 ＜　卒業、間近（まじか）の、総合講義とは、何か？　＞ 臨床実習の終了は、六年次の、お盆である。　一週間の後（のち）、この 総合講義なるもの、始まるんだが。 教える側と、学ぶ側に、誤解が有るらしい。　総合講義は別名を、トピック ス、と言うくらいで。　　トピックス、言うたら、話題の事、だわな。 教える側。　最新の話題を、かいつまんで出す。　学ぶ側の我ら、試験対策 の講義だ。　と、ばかり思うから、卒試、国試に、関係の無い内容、出され ると。　何んじゃいな！　言いたくなる。　まあ、余りにも、かけ離れた講 義。　少ないんだけれど。　トピックスなんて、ネーミングが、良くないのだ。 　*　　　　　　*　　　　　　* 歯科医師の国家試験が、ユートピアで、不合格を取るのが、難事だった頃は。 先生、馬鹿話で学生を、笑わせとれば、良かったらしいが。 我らの二期、前、辺りから、歯科医師の過剰だ。　何だ、で、合格率、７５％。 受験生の足切り、なんて、始まり。　試験問題の持ち帰りは、ご法度に成るし。 歯学生の環境、突然、悪化したのにだ。　ノー天気の先生。　まだ昔の夢か ら、覚めておらん。　と、見えて。 我ら学生、国家試験、対策の講義だ、とばかり思ってる所へ、自分の研究の話 だとか、最近の学会の話題なんかを、しゃべるのが、居るのね。 こんな講義なのに、出席率が８０％以下は、留年に、するぞ！　だ、なんて、 大学は、出席を、強要しとるんだな。 この出席。　試験の上位。　十番以内は、出なくて良い。　十一番以下は、 出ないと、留年の、はず。　なんだけど、教室、いつも、ガラガラだよ。 なのに出席率は、９９％だ。　何で？　と、思うわな。　種明かし、は、 こうだ。 たとえば、長いすにワシ一人、しか、居ないのに。　出席票には、三名、 時には五名。　ワシが、記入するのよ。 これ、イカサマです。　こんな出席票を集めて、学事課、どないすんねん！ うそ八百。　イカサマの数値。　出席、十五名なのに、百名の名前が、登録 された。　これで、別に、どうって事にも成らん、のだ。 だいたい、卒業順位で、上から三番以内、出とらんかったぞ。　時々、面白 かった講義の、次の日に、出たりする。 これは、つまり、出席した仲間に、面白かったわよ！　って言われて、出て 見ると、次の講義。　決まって、つまらん講義なんだ。 何だ、つまらん！　と、出るの止めると、次の講義。　めちゃ面白かったり して。 成績、上から三名。　卒業試験で、上手いことしたと、思とるんやろが、大事 な場面、外しとるかも、知れんのだ。 ワシ、成績わるいから、出なきゃならん組だったが、一回も休まず、皆勤賞を 取った。　皆勤賞、五名は、居たな。 ワシも、試験の効果の、低い講義、なんかに出ず。　図書館で点を取る勉強を すれば、もっと良い成績で、卒業出来たと、思う。 途中で、何回も、どうしようかな？　考えた。　結局、総合講義。　全部見よ うと、決めた。　おもろい講義も、結構、有ったのだ。 その代わり、下らん講義も、どっさり有った。 ＜　総合講義の、光と陰（かげ）　＞ また言うけど、 総合講義。　出席の取り方に、難がある。　あれは、確か、口腔外科の講義 だった。　朝一番の、九時からの講義だった。 若い先生、子分を従えて、颯爽と入室。　驚くんよ（驚いたのよ）。 ありゃりゃっ？　なんだい、これは！　　学生が、三十人も居るぞ！ プリント。　十五部しか、刷って来なかったぞ！　三十人も出席だなんて、 君らの学年、まじめだなあ！ 呆れておられた。　新卒、下っ端の先生。　足りない分の印刷に、学事課 へ走って行った。 こんな具合に、朝一番の講義。　少ない時は、七名。　多い時でも十五名。 その日は、何の偶然か？　三十名だなんて。 さては、先生の名講義を聞きつけて、学生が、雲集（うんしゅう）したん ですよ。 　*　　　　　　*　　　　　　* また、またあっ！　おだてるなよ！　ボク、おだてには、弱いんだ。 口腔外科。　おだてに弱い先生。　多いからな！ おだてに弱い先生で、有名なのは、何を隠そう。　歯学部長だった山本先生 その方だ。 なんでも、ちょっと褒めたりすると、後ろ向きになって、後ろ手で糸を、結 んだり、したそうだ。　時には、手品みたいな、アクロバチックを、演じて 見せ。　若い先生の、ヤンヤの喝采を、浴びたそうな。 我らも、見たかったなあ。 君ら、見てないの？　おしいなあ。　あれは、一見に値したぞ。　山本先生 変な姿勢で、糸を結んだり、するとね。 周りの若い先生、腹を抱えて、笑い出したもんなあ。　すると先生、いよい よ、可笑しな結び方、始めるんだ。 ありゃもう、外科じゃなくて、手品だったね。　見てない？　実に残念だよ！ と言う所へ、若い先生、印刷した追加のプリント持って、駆け戻って来た。 配り終わったら、講義、始めるよ。 　*　　　　　　*　　　　　　* この講義の（真実の）出席者は、三十二名であった。　出席カード、九十八 名になっておった。 ワシも一人しか居ない長いすで、五名分、書いた。 カード集めに来た先生、変な目でワシを見たが、別に何も起こらない。 だから学事課、こんな数字を真に受けて、統計なんか、取るなよ！ 　*　　　　　　*　　　　　　* ＜　駄目学生。　総合講義でも、やっぱり、駄目学生　＞ 一番駄目な学生は、こうだ。　出席して、名前書いて、講義は聞かずに、 講義と関係の無い、テスト問題なんか出して来て、見ておる。 そして三十分。　必ず、居眠り、始める。　この手の学生、概ね（おおむね） 留年した。　むべなるかな。　だ！ そんな学生を見てると、ワシ、名前、書いといて上げるから、勉強は、図書館 でしろ。　言ったものだ。　そんな風にして、 テストに関係の無い講義。　つまらない講義。　その先生の出席率、見事に 減少して行った。 大学は出席率、８０％以下の学生。　留年させる！　なんて言って、出席を 強要したが、そんな知恵が有るなら、まず、教える側の吟味。　するべきだ！ 卒試のメダリスト。　揃って総合講義、出とらんだぞ。　ワシの実感でも、 総合講義、真面目に出たりすると、テストの成績、むしろ下がる。 卒業した後の感想でも、総合講義は、改善の余地が多い。　総合講義なんて 止めておいて、図書館で問題集に取り組んだ方が、能率、五倍になる。 総合講義は、中身が薄い。　情報量が、少ない。　あの程度なら、二十分で お仕舞いだ。 ワシは、出席を止めようと、何度、悩んだか判らん。　そんな総合講義に、 学生を縛り（しばり）付けるなんて、合点が、行かん！ ＜　明海大、歯学部の、学生諸君へ　＞ その中にあって、この講義、だけは、出とけ！　と言えるのは、基礎系なら、 材料学の、Ａ先生の講義。　この先生の講義、全て出るべし。　国家試験、 この先生の講義だけで、合格ラインは、クリヤー出来る。 学生の評価も、断トツの一位。　言っては何だが、明海大の歯学部。　全て の講座。　材料学の様に、講義してくれたら、 合格率、目に見えて、向上する事。　請（うけ）合う。 次は、ワシの、独断ながら、この講義は良いぞ！　と言えるのは、小児歯科 だ。　これは良い。　ここの出すプリント。　これだけしとけば小児歯科、 外（ほか）の勉強。　せんで良ろし（しなくて良い）。　　嘘偽り（うそ、 いつわり）無し。　それ位、中身が濃い。 矯正歯科も良かった。　特にＡ先生の講義。　ポリゴン表の見方。　あれ聞 いた瞬間。　矯正歯科で、ポリゴン表の出た問題。 ホイホイ、正解になった。　問題の解き方。　上手く教えとる。　解法のツ ボの、伝授だな。　ホンマ。 諸君等はポリゴン表、言われても、判らんと思う。 患者。　矯正を始める時。　頭部顔面（とうぶ、がんめん）の側方レントゲン 写真を撮る。 この写真から、頭蓋骨の、観測点を取り、それの位置関係を、図と、数値で出 したものが、ポリゴン表だ。 下顎の出た人も、ポリゴン表で分析すると、下顎が出てるんじゃ無い。　上顎 が退っておるんじゃ。　それで、下顎が出てる様に、見えるんじゃ。 てな判断、する訳だ。 　*　　　　　　*　　　　　　* 臨床系の講義。　どれも面白かった。　ただし、この面白さ。　斬った張った の、面白さ。　国家試験の、役に立つかどうか？　は、別問題。 やはり、基礎系の講義に、改善の余地が、多い。　講義は悪くないが、歯科医 師の国家試験。　問題の周期が、五年で、移って行く。　十年で、別世界。 基礎系の先生、十年遅れてたぞ。 十年前の国家試験の傾向。　今だに墨守、では、堪らない。　たとえばだ。 細菌の英語名、だとか、薬物の相互作用。　歯の外形なんぞは、卒後の臨床で、 役に立つ、重要な学問だけど、当面の国家試験には、出ない。　十年前は、 出た。　そんな分野の講義。　見当外れだ。 来年の国家試験に、そんな問題。　まず出ない。　そこの所を理解せず、五年 前と同じプリントでは、学生から、厳しい評価が、下っても、文句言えない。 臨床系には少ないが、基礎系では、紋切り型の先生、結構、居られた。 　*　　　　　　*　　　　　　* 学生が聞いていようと、いまいと、関係なく。　プリント、べらべらと読んで わたしが教授から命令された教授範囲は、ここまで、です。 時間、まだ有りますけど、読み終わったので、お仕舞いにします。 言うて教材。　小脇に抱えて、サッサと講義室を出て行かれた先生。　学生、 あっ気に取られて、しばし言葉も、出なかった。　一人の学生、ワシを見て、 何ですか、ありゃあ？　　自分の義務だけ果たしたら、サッサとお帰り、遊 ばされましたよ！　　と言うような先生も、居られなかった訳でも、無い。 まあね。　基礎系の先生の関心は、自分の研究なんよ。　痛風の治療薬とか、 何かのドエライ研究してると、学生の相手なんて、苦痛になってしまう。 まして総合講義なんて、余計な手間仕事、以外の、何物でも無い。　と言うて 出ない訳にも、いかんから。　国試の問題集など、パラパラとめくり、 さて、何を話そうかな？　なんて呟（つぶや）かれる先生では、国家試験を 控えて、カリカリしてる受験生の要求。　答えるの、難しいのは、当然。 学生から言うと。　世界的な研究者でなくても良い！　教える事に、全力 投球してくれる先生に、来て欲しい！ 研究は、研究教授に成って、好きなだけ、してくれ！ 教育は、教育担当の教授が、全身全霊で、当って欲しい！ 研究して、講義して、学生の面倒見て、実習の相手して、その上、総合講義 で、国家試験の対策をさせられたんでは、基礎系の先生、ぼやきの一つも、 出ますでしょ。　これからの歯学部、この辺の整備、求められる。 如何にも、片手間に講義されると、学生としては、シャモメ、ますがな！ シャモメル、は、名古屋弁の筈？　意味、何気に（なにげに）、むずかしく あるよ！ 我が、二十九期。　この、なにげにが、なにげに、流行った（はやった） なあ！ ＜　国家試験。　本学の合格率の、大予想　大予言！　＞ 世の中はコンピューター時代。　人生占いも、コンピューター。　我が明海大 歯学部、二十九期。 いよいよ、国試の会場に、乗り込むと言う日。　歯学部長、合格率の予想を された。 コンピューターで予測するとね。　国家試験、この内の二十名、落第するん だ、なああ。 講義室、後ろの二列。　浪人組になる確率、高いんだぞ！　そこデスシート、 言うの、知ってたなな？ 座らない方が、良いんだよ。 まあ君ら、がんばってだ、一問でも多く正解を取って、コンピューターの 予想。　覆して（くつがえして）呉れ！ 結果は、な、なんと！　ドン、ピシャリ！　正確に二十名が、不合格。 国家試験に、落第！ お目出とう、御座います！　予備校の入試では、がんばってね！ 　*　　　　　*　　　　　* とにかく、従来の行き方の、通用しない時代の、来たことだけは、確かだ。 新しい流れに、乗れるか？　乗れないか？　の勝負。　始まっておる。 我が明海大も、国試対策。　大学が変質するほどに、改革した。　猛烈すぎて 学生は、ヘトヘト。　担当の先生も、クタクタ。 国試対策では明海大。　金メダルを取れそうだ！ 　*　　　　　*　　　　　* 卒業が、だんだんと、近づく。　残りの原稿も、少なくなる。　最期の一枚 の入力が終わったら、ワシ、死んで、仕舞うんじゃないかと、心配になる。 次の段では、書き残した所を、前後の配慮など、無視して、思いの丈（たけ） を、書こうと思う。 ２００８年は、米国発の、サブプライム問題で、終始した。　アンカー役の A氏。　お仕事が、信託投資の分野なんで、てんてこ舞い、だった。 中国とインド。　台湾とベトナム。　駆けずり回って、おられた。 ワシの、歯科医師の世界では、自費が、激減した。　保険の患者まで、足が 遠のいた。 歯科医師、もっと経済、解らにゃ、いかんぞな、もし！ では、次へ、行きたい。　その前に、失礼して、おトイレ。

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