* 自分史 製造業系 ( 五十歳までのワシ。 鉄工所三十二年間の想ひ出 ) *
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第 2 章 * 久治良家の遺産相続戦争。 1 / 5 < 久治良家(土田家)の宿命と、ワシ > * ワシの曽祖父、伊三次郎。息子二人を天秤に掛けた。 わしに尽くした方に全財産を譲る。なのに急死。 財産は長子が法定相続。祖父伊義へ、である。 次男は怒り、祖父と義絶した。親類の縁を斬ったのである。 この祖父、ワシの父、伊一に言った。全財産はお前の物だ。 だから給与は袋のまま、わしに渡せ。 父、三十六歳まで従った。小使いも貰わずに。 祖父、約束を違え、全財産を妻に譲って逝った。祖母へである。 祖母、父には一円も分与せず、次男以下に分けた。 父 伊一、実母の喪主を拒否し、久治良家の墓にも入らなかった。 誠に我が久治良家は、分裂して行く 家系ではある。 祖父の代では長子が勝った。父の代は長子が負けた。 つまり我が父、伊一、苦杯を舐(な)めたのである。 ワシは、この第二章を、父土田伊一の霊前に捧げたく 思う。 * * * |
< 久治良家は、分裂して行く家系だ! > 小説家で有名な、太宰治。 誰が見ても、青森の裕福な地主。 熟爛 ( じゅくらん ) した家系の人。 そこから転落して行く子孫の姿、だわな。 熟爛の爛(らん)は、ただれる の字だ。 太宰治は、ただれて行く代の、典型的見本である。 ワシは若い頃、物書きを志した。 有名人、成功者の伝記、山ほど読んだ。 いかなる分野であれ、成功した人には、しかるべく、 成功の条件をセットする人( 大抵、親 )が、成長期に必ず居るものだ。 これはもう、例外が無い。 つまり成功は、君、一人では出来ない。 二代、三代の、積み重ねを必要と する! ってえ事を、ワシは感じた。 * * * 我が久治良家は、分裂して行く 家系である。 砕け散って行く 家系である。 何故( なぜ )そうなのか? それをまず、説明したい。 * * * < 我が曽祖父、久治良( 土田 )伊三次郎の 罪。> ワシの曽祖父。 いさんじろう、から始める。 彼こそが、我が久治良家の分裂の、始祖であろうか? 良く ない伝統、残して行った先祖だ。 生き方のまずい曽祖父では、あったのだ。 * * * 石川県は小松市。 市役所の前に、芦城( ろじょう )公園がある。 あそこ、 昔は情緒に富む、落ち着いた雰囲気だったそうな。 破壊されたのである。 誰が破壊したのか? 小松市にあった刑務所の囚人が 犯人である。 刑務所の建物を改築する際、徒刑囚を一時的に、芦城公園へ移したのだ。 彼ら、日がな一日、公園内の建物や銘石の類( たぐい )、壊してた。 惜しい事ではあった。 刑務所の所長に、見識が欲しかった。 ワシの曽祖父、伊三次郎。 この刑務所に勤めてた。 徒刑囚に、農作業の指導をしてたらしい。 家は小地主である。 わずか ばかりの土地だが、今から見て、大変な場所なのだ。 北陸本線、小松駅の前だ。 2009年現在、久治良家の所有する、駅周辺の 土地は、一坪だに無い。 小松駅の正面、駅前の大道りに面した土地は、父の末弟、五郎叔父が売却。 後ろ半分も、ワシが二十代の頃。 父伊一、売却して仕舞った。 駅前の土地を売る馬鹿 ・・・ と言う。 正(まさ)に、これである。 ワシは、売ってはいかんッ! 駅前の土地を売ってはいかんッ! と、再三再四、父に言ったのだ。 すると父、ワシが仕事で留守の日に、こっそりと売却。 これで 久治良家の土地は、小松駅前から完全に消えた。 駅前の土地は、仕事する土地である。 働いて呉れる土地である。 現に、 道路の向かい側にある土地。 喫茶店やカメラ店に貸し出して、月、 数十万の家賃を得ている。 地主の息子は開業眼科医。 これまた、すこぶるに 稼いでいる。 ワシの父と五郎叔父は、郊外の土地で、固定資産税を払ってる。 家賃・地代とは、寝てても振り込まれて来る、 アホ に近い収入なのだ。 駅前の土地を、郊外の住宅地と交換して、どうする気だ? 砂金と砂利 ( じゃり )の交換と、変わり無い。 父より前に土地を売った、五郎叔父に、ワシ、いつも嫌味を言うのだ。 駅前大通りに面した、一等地を、だよ。 考え無く、ホイホイ売却とは、 テメー、全体、どんなオツム、してるのか? ・・・ と。 郊外に家を建てたいなら、駅前の土地の、家賃収入で建てれば良い。 月に 二十万づつ、返せる。 月に二十万だぜ。 御殿が建つ。 二十年で、支払いは済む。 後の家賃は収入と成る。 小松駅が有る限り、未来 永劫、続く収入だ。 何で、それが判らんッ! この、どアホ めがッ! ・・・ と。 * * * 五郎叔父の息子、ワシの従兄弟( 二十余名 居る )の中で断トツ、商売が利く。 駅から徒歩、百メートルだぜ。 大通りに面した、一等地だぜ。 一階を喫茶店。 二階は、歯科医院などに貸し。 三階より上でビジネスホテル でも開業すれば、 おまはん、小松を代表する実業家に、成れたものをッ! この辺が、チャンスを生かすか? 殺すか? の差なのである。 過ぎ去った夢。 絶対に還( かえ )らない幸運。 馬鹿だなあと、嘆く 以外、有りまっせん! 郊外の高級住宅地? 固定資産税を盗られるだけだ。 取ると盗られるの差。 出ると入るとの差。 この差、馬鹿になりません! * * * さて、我が曽祖父、伊三次郎です。 息子が、二人居ました。 上が我が祖父、 伊義( いよし )です。 弟はワシ、名前を知らんのです。 なぜ知らないのか? これが問題です。 我が祖父、伊義。 長子ですから、当時の法律では家督の相続権者。 ところが 曽祖父の伊三次郎。 二番目の息子に、こっそりと耳打ち。 一応、長男の相続に成っておる。 だがしかしだ。 お前がワシに孝行すれば、 家の財産。 お前に継がせても良い。 このセリフ。 皆さん、どう思う? 子供同士を戦わせる言葉ですよ。 * * * ワシ、この曽祖父の両親を知りたい。 伊三次郎もまた、そんな感じの親に、 育てられたのでは、なかろうか? 伊三次郎の、上記のセリフ。 ワシは、邪(よこしま)の極(きわ)みだと 思う。 親業の落第者である。 次男、それを聞いて後、兄貴に隠れ隠れ、親の伊三次郎に好い事を、したので ありましょう。 ところが伊三次郎。 はやり病でポックリと死去。 法に従いて、久治良家( 土田家 )の全財産、長男の伊義( いよし )が相続。 当ての外れた次男。 怒り心頭。 兄貴と絶交した。 親戚の付き合い、 切って仕舞ったのです。 だからワシ、彼( か )の家が親戚だと、皆目、知らなかった。 ある時それで、恥を掻きました。 そこで初めて、経緯を知りました。 * * * ご近所に、和裁塾の女先生が居られましてな。 ある時、そこの先生。 あなたの親戚の子が、うちに来てますよ。 言われたのだ。 ワシ、全く 知らんから。 名前は同じ久治良ですが、親戚でも 何でも無い。 赤の他人だと返事したのです。 和裁塾の先生、あきれた。 と言う顔して、ワシを見ました。 家へ帰って、この話をすると、母。 実はね、ありゃ死んだ爺さんの弟だ。 親戚なんです ・・・ に、ワシ、びっく りです。 今の今まで、まったく 知らなかった。 道理で和裁塾の先生、あんな顔 した筈だ。 その時、ついでに、こんな話も耳にした。 我が祖父、伊義。 冬の雪道を歩 いてた。 子供達の雪合戦。 子供の投げた雪玉が、祖父の目に当った。 祖父、目を損傷。 失明の寸前。 これを聞いた絶交の弟。 小躍りして喜んだそうな。 ちなみに祖父に雪玉を当 てた少年を、ワシは知っている。 その子の親。 居合わせた子供達の家を、一軒づつ廻り。 ばらしたら、只で は済まぬぞと、すごんで歩いた事も知っている。 我が祖父、のちに失明した。 何と無く、悲しい話ではある。 * * * 次段では、この、雪玉で失明した、我が祖父。 伊義( いよし )の罪を、書く。 彼もまた、曽祖父の伊三次郎と同じく、子供達を天秤に掛けて、争わせた。 その結果、父( 伊一 )は敗退し、財産は次男以下に、配分された。 曽祖父、伊三次郎の時は次男が敗退した。 財産は長子( 我が祖父 )が相続した。 父の時は、反対だったのである。 父が相続出来るとされた、財産の大部分は、次男以下に分与された。 父は、全財産の相続を条件に、三十六歳まで、給与をそっく り、渡してた。 小使いさえ無しだった。 せめて小使いをと要求すると、祖父の伊義、顔をしかめて言ったそうである。 お前 なぁ 〜 何んで、もう少し待てないのだ? わしは、すぐに死ぬ。 そすれば久治良家の全財産、すべてお前の物じゃないか? 何故、それまで待てないのだ? ・・・ と。 祖父( 伊義 )は約束を破った ・・・ と言える。 ワシの父は、祖父の葬儀の、喪主に成らなかった。 喪主は祖母が務めた。 この祖母の死では、次男以下、費用は、こちらが全部持つ。 名義だけ貸してく れ。 の要請を拒否し、葬儀に、行きもしなかった。 父の実母の葬儀である。 如何に深刻だったかが判る。 実はワシも行かなかった。 祖母の葬儀にだよ。 長子一家がボイコット した葬儀とは、一体、何なのだ? この祖母 土田ふな。 土田の家系を破壊した。 次段では、ワシが祖母の葬儀に、行きもしなかった理由などを書く 。 |
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