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第 二 章  *  6 / 6  

< 時岡教授、さらに語る >



< 平和か? 戦争なのか? >


人体解剖は、二年次である。 三年の夏休み、時岡先生がワシに、出てくれ、
言うんで夏休み、解剖演習に出た。

解剖演習と言うのは、九月からの実習の前、ご遺体を何体か用意して、
希望する学生に、予行演習させるものだ。


参加は自由。 二年生が中心。 一年生も混じる。 三年以上、まばら。
行って驚いた。 ご遺体一つに学生、二十名。 白衣は着ても、道具、
用意して無い学生、多い。 するとどうなるか?

ワシの道具、黙って持って行く。 ニャロメだったね。
指示して開始は良いが、ご遺体に八人くらい、取りすがり、しかも自分から
次の学生と替わるの、一人も居ない。 残りの学生、


後ろで不機嫌な顔して立っておる。 適当な処でワシ、
命令して替わらせた。 楯突く学生、居たら一戦、あるかな? と思ったが、

幸いな事に、どの学生も、素直に替わって呉れた。 ありがとう!
だけど、ワシが言わんと誰も、絶対に替わらん。


次の年、その学年の子らに、聞いたのよ。
解剖実習、どうだった? 誰にも触らせず、一人でしてた子、居なかった?

居た居た。 沢山居たわよ。 もお、いやんなっちゃうわ! 一人でしてん
のよ。 こっちの身にも、なってよ。 毎日毎日、こんな実習、早く終われっ
て、祈ってたわ!


これを担当の先生に聞くと、こうなる。

みんな仲良く解剖してたわよ。 あなたみたいに、問題起こす人、一人も
居なかったわ。 あなたは何故、あんな問題、起こしたのよ。 笑われ
ますよ。 あんな問題起こす人、一人も居なかったわ。

ワシ、問題起こして、正解だったと思った。 諸君らはこれ、どう考える?


 *     *     *


書かざるを得ぬが、この先生、時岡教授と仲が、恐ろしく良くない。
B子らの申告により、ワシを組より抜いて、教授自身の組へ移動させた事

前に書いた。 この先生、教授の処置に反対で、物凄い勢いで、教授に抗議
したそうだ。 この先生と教授、以前から、馬が合わない。


何か有ると、激しい口論に成る。 こんなの、大学では珍しい。
仲が良くないと口論どころか、下位の先生、学外へ追放されるのが、一般で
ある。 時岡教授、ワシに言うのよ。

あの先生には、辞めて貰おうかと思う。 ワシ、即座に返事した。
教授、それだったら、なんで十年前に、出さなかったんです? 今頃急に辞

めろ、なんて、遅い。 教授の定年、あと一年です。 ここは放っとくのが
正解。 (時岡)先生は教授です。 勝負、先生の勝ちですよ。 


時岡教授、お人が良ろしい。 大学の教授なんて、気に喰わないと言うだけで、
スタッフの先生、いびり出す。 ワシも何回か見たが、いやらしい見せ物だぜ。

この(女の)先生なんか、時岡教授に感謝せねば、ならぬ。 なのにワシの所
へ来て、教授の悪口は良くない。 あれは顔面神経の、剖出(ぼうしゅつ)だ
った。


ワシ言った。 確かに先生の言われる通り、時岡教授の講義、小さい間違い
沢山あります。 試験問題の中にも、おかしな所、散見されます。 でもね、

教授に何か質問すると、医者のような回答、して来れます。 教授の奥さん、
開業歯科医師なんで、手伝ったりしますから、麻酔の仕方、どこに注射した
ら良いか? 先生は教授の様に、指導、出来ますか? 


も一つ、教授の良い所。 教授の解剖を見ると、教育的なんすよ。
先生方の解剖を見ても、何だか、さっぱり判らない。 この辺の評価、

しないんですか? しかしこの先生、教授の批判、止めようとしなかった。


こんな先生が居ると、針の先ほどの間違いも、大騒ぎされるから、心安らぐ
ヒマが無い。 一つ反論すると、この先生、我らの六年次、国試の模擬に、

教壇に座られた。 カンニングの監視役、なのに椅子に座るなり、ひざの上に本
広げ、トイレの学生が手を挙げても無反応。 最後まで本、一筋。


てめえ仕事、さぼっとるやないか! それは、良いのか?


 *     *     *


この時、ワシも手を挙げたが、先生、本に夢中だから、反応無し。 勝手にト
イレ、行って来た。 こんな調子なんで、次のテストでも、勝手にトイレ、
行ったのだ。

ところが、この時の監視、クラブリ(補綴の一つ)の怖わあい先生。 飛び出
して来られ、君いっ! (大声だ!)許可無く席を立ったな! これが国家試
験なら、君は失格だ!


と、油(あぶら)、ギリギリに絞られた。 だもんだから、あの先生の事、忘
れようにも、忘れられんのだ。 誠に、ニャロメだったよ。


 *     *     *


時岡教授の物忘れ、確かにひどかった。 実はワシも今、似たようなもの。
道具の名前、出てこない。 薬の名前、間違える。

あの(女の)先生が横に居たら、ワシ、糞味噌(くそみそ)に言われるな。
アシストは心やさしい人で無いと、歯科医師、仕事が出来ない。



< 時岡教授の、教え(抜粋) >


歯医者はな、面倒くさい事、丁寧にする人間やないと、困る。


ボク、ドイツのスパルテホルツの解剖学のオリジナル本、持っとる。

原版が第二次世界大戦で、焼失したんや。 今のは復刻版や。 ありゃ、
駄目だぜ。 中味、落ちとるよ。


解剖学の教科書だけ見て、判るような学生、こんな大学(我が明海大歯学部
の事だす)へ、来るかい! 

でも、この大学のレベル、ボク好き! ワルほど面白い。(聞いてた
学生に) 君らのこちゃで! ワッハハハハッ! 君ら人間味あるっ!


この大学来た頃、実習の時じゃ。 女の子のケツ、触ってな、そしたら
周りの学生、ボクを白い目で見るんや。
後で大学から、お灸、据えられた。 痛かったでえ!


ある日の教授、学生の求めに応ずるかたちで、模範解剖を示された。
上腕二頭筋の剖出の仕方、教えられた。

女の子たち、身を乗り出し、真剣な表情だった。 教授、これをご覧になり、
大声で、君ら、男を選ぶ時も、それ位、よーく見て、選べよ!


 *     *     *


中腰で作業してると、(腰の)伏在(ふくざい)神経が擦れて(すれて)
足が痺れる。 これ歯科医師の職業病。 歯科医師で腰の痛い人、多い。
休日ゴルフ。いよいよ良く無い。


ヤクザの方、次を、よく読んで下さい。

短刀で腹、プスッとされるだろ。 すると見よ。 この大網(だいもう)が
寄って来て、短刀に巻きつくんじゃ。

大網とは、腸を固定する、膜状の組織じゃ。


腸がプス、されて、穴が開く。 するとやはり、この大網が塞ぐんじゃ。
大網言うのは、そお言う働きを、する。
君ら、参考になっただろう。 ワハハハハッ!


ヤクザとは、江戸時代に出来た言葉。 893と書いてヤクザと読む。
893の合計は、20である。 これ、花札の意味、ブタ、役立たず。
よって役に立たぬ人を、あいつ、ヤクザな奴だなあ、と言うた。


君ら、ボクの解剖実習を受けた以上、奥さんの乳ガン、必ず早期に発見
して来れよ! と言うのも、ボクの知ってる医者の奥さん、乳ガンに成った。

診断した医者、患者の旦那(医者)を責めるのよ。
何で今まで、放置した。 気が付かなかったでは、済まんぞ。君は医者じゃ
ないか、とね。


怪我したら、血を絞り出してから、治療せよ。 これヤコブソン病の、予防。
ヤコブソン病は、十五年後に結果が出る。 昔、ニューギニアの人食い人種
人間の脳を、喰った。 十五年後に、全員、死んだ。


読まねば成らん論文、山ほど有る。 言うとる内は、研究者として、まだ若
い。 未知の世界へ、一歩でも踏み込んでみろ。 論文、一個も有りゃせん。

ボク、未知の世界へ踏み込んだ時、周りから論文、スーッと消えた。


ある時教授、学生と話していると、彼のお父さん、大歯の同級生だ。
君、実家に帰ったら、時岡は出来が悪うて、まだ大学に居て、卒業出来んと
言うといてくれ!


歯学部はね、実習あるから在学中は大変やけど、卒業すれば、楽じゃ。
医学部は、この反対でな。 卒業しても一人前になるのに、十年掛かる。

猛勉せな、あかん。(歯科医、昔は卒業と同時に開業の人、沢山居たのだ)
つまり歯科医師、その程度で、オーケー。


教授ある時、天井のモニターカメラに向かい、大口開けてノドチンコ、画面に
写された。 実習室の学生、ドッと来たね。 今の学生、こんなのは受ける。

見てると前へ来て口開けて、真似する学生まで、出た。
その学生の名前、書きたいが、書けんわい! ここ読んで、苦笑するかな?


 *     *     *


乳ガンは、女しか成らん。 ホルモンに原因、有るんやろな。
それが君、最近、男に乳ガンが出た。 これ女に成ろうとして、性転換を受け
た奴だ。 女性ホルモン、使ったのよ。


教授の教え、もっと有る。
ワシ、教授の組へ来て、本当に良かったと思う。 男の子三人、女の子一人。

女の子なんて、席を譲ってどうぞと言っても、いえ私、ここで結構です。
彼女来なくても、席は開ける。 前の組とは、偉い違いだ。


あそこは敵意。 ここは大和なでしこ。 これが、日本の娘でしょうな。
この女の子なら、結婚相手に紹介出来る。 これが、普通じゃ無いかな?

男の子三人も、大らかなもので、ワシ全身全霊、解剖に打ち込む事が出来た。
お礼します。 ありがとう!


ワシを追い出した後のあの組、どうなったか?
A子の天下。 B子C子、見学させられた。 男の子二人、当然見学。 A子は好
きな様に解剖。

ああ言う風景を、異常と言うか、何と言うか? 今の若い連中、こんな世界に
生きておるのか? ワシ、奇怪ですら、あった。 しかもこんな組が、少なく
も七つ有ったのだ。


かと思うと、皆が分担して、ご遺体には平等に触れておる組も、有る。
ワシ、何人もの学生に聞いてみた。 一人の学生が王女さまみたい、

誰にも触らせずの解剖。 おかしいと、全員言うが、同時にまた、それに文句
付けるのも、いけないと言う。 後が怖いんだそうだ。


それではあの組、三人の女の子はその後、どうなったか? B子、A子とは
口を利かなくなった。 このB子、一種、親分肌。 求心力が有る。 友達が
多い。

A子、B子のお友達志願。 だったらB子に見学などさせず、一緒に分担して
解剖すれば良いのに。 三ヶ月間、完全に見学させて、それでお友達に成ろう
なんて、誰だってお断り、でしょう。 A子、それが判らん。


ワシ、A子が何故それを理解せんのか? 今だに判らん? 三ヶ月間、見学
させられたら、どんな大らかな仁(じん:人のこと)でも、腹に据えかねるぜ
この当然の事が、理解されない。


B子、それで、どうしたか? と言うと、実習は四時半で終わる。 四時半に
なると全員黙祷。 それからは、自由延長だ。 ほぼ全員、六時まで残る。

さらに半分が、七時まで残り、さらに半分が、八時まで残る。 


B子の組、四時半に成るや否や、先頭切ってお帰り。 B子が帰ると、残り
の学生も金魚の糞(ふん)よろしく、B子に付いて帰ってしまう。

彼らの残したご遺体を、ワシは何度も開いて見た。 

A子一人の解剖だ。 30%以下の剖出。いじって有ります、と言うだけの、
おぞいものだった。 ワシ合掌して、ご遺体にわびた。


こんな場合、指導の先生がA子を排除して、全員に解剖させる態度も、
必要ではなかろか? ワシがご遺体だったら、こんな解剖、お断り、ザンス。

この周りの組、どこもそれなり、分担して解剖しとるや、ないか!


今の若者、幼稚園そのままだ。 汚いオシメ、自分では変えようとしない。
先生が言って、替えさせる以外、無いのだ。 だから先生が介入しろ! と言

うと、文句言われる。 みんな仲良く解剖してるのに、あなた一人、なんで問題、
起こすの?


 *     *     *


解剖実習では色んな事、有った。 愉快な事、多かった中、不思議に
思い出す、問題のシーン。 これなんかも、その一つ。

近くの組の学生から、相談が来た。 A君、ボクの道具を使って困る。文句
言っても止めない。 久治良さん、ボクの道具を使わない様に、
言ってください。


子供じゃあるまいに、そんなん自分で言え。 なんて言いつつ、A君にアプ
ローチ。 驚いた。 彼、親は開業医だ。 お金持ち。 入学祝に400万、

外車、買って貰いました。 所属、ゴルフクラブ。 つまりお金の掛かる
クラブだ。 解剖道具、先輩のプレゼント。 つまり只で貰った品物。


そのただで貰った解剖道具、惜しがって仕舞い込み、人の道具を使うなんて、
おめえさん一体全体、どんな了見、なすっておられますんや? と言う所。

話てみると良い男なんだな。 だけど、してる事、感心しないぞ。


この件、どうなったかと言うと。 A君、今度はワシの道具を使い出した。
それも無断だ。 あれは小腸を切り開く所だった。 A君、うろうろしとる。

なんでうろうろか? と言うと、ワシが居るから、道具を使えないからだ。
ワシ、袋からハサミ、取り出し。 これ使え言うて、A君に渡した。


彼、微笑してありがと言うと、ワシのハサミ持って流しへ行った。
その後姿、眺めてワシ、名状しがたい気分だった。 A君、どんな歯科医師に
成るんだろう?

こんな金持ちが、なんで自分の、それもただで貰った道具、使わんのだ?
歯科医師になって彼、どんな仕事をしたかを、二十年後に報告したい。
その頃の彼、どんな顔して歯科医師しとんのだろう?


 *     *     *


解剖実習、A子との戦争は当然、あれで終り、には成らん。 用心してると、
案外早く、二ヵ月後だ。 組織学、顕微鏡実習だった。

もっともワシ、待ち構えていたから、ある意味、飛んで火に入る何とやらだっ
たが。 ワシはA子を、ものすごいカウンターパンチで、ぶっ飛ばしてやった。
それは、こう言う顛末だ。


解剖学。 担当はA助教授。 実習室、総勢三十名だった。
大きくて長い実習机で我ら、顕微鏡で、臓器の標本を眺めつつ、スケッチだ。

A子、ワシの斜め向かいだった。 一時間は、何事も無く過ぎた。 この時
ワシの右隣りの女の子。 実習そっちのけ、来週のテストに掛かりきり。

問題が解けんので、ワシに質問。 この問題、答えは何あに?


ワシ過去問は使わない主義だから、問題見たけど、解からんのだ。
ちょっと待て言うて、A先生のところへ行った。 先生、これの正解、
どれですか? 聞いたんだ。

A先生、今は組織学の実習中だろ? 実習以外の勉強、しちゃあ駄目だよ。
なるほど、その通りだ。 おい、この問題、後にしろ。 ワシ、女の子に
言うて、プリント返した。 そしてまた、顕微鏡を覗いてた。


この時ワシの腕を、打つ者が居る。 顕微鏡から目を離して見た。な何と、
A子じゃあ、ござんせんか! 彼女、ノートの切れ端を示し、読めと言う。

なんじゃい? と見ると、あなたは不謹慎です。謝りなさい。 てな事、書い
てある。 この瞬間だ。 ここが勝負の分かれ目だ! この瞬間の反撃、
ワシの人生を、決める!


全身に闘志がみなぎった。 ワシ、怒髪天を突く勢い、A子を糞味噌
(クソミソ)に怒鳴り付けてやった。 実習室に、ワシの怒声、鳴り響いた。

ケチョンケチョンにこき下ろしていると、血圧が昇がっちまって、
目の前、ボーだ!  寿命、縮めたよ。 こんな奴を奪命者(だつみょうしゃ)
言うんじゃ。


 *     *     *


A子、思いも寄らぬ反撃に、顔を黒ずませ、うつ向いて居た。
担当のA助教授、何も言わず。  実習室、元の静けさ。

ワシ、思うに、不謹慎はテメエの方だろう。 頬杖ついて、アー眠いだの、
ヤル気無いだの、くだらんセリフ、抜かしやがって、

ワシの様に、実習時間一杯。 黙々とスケッチにいそしむ優等生を、何と
心得る?


この時だ。教授が部屋に来られて、モニター画面を出し、標本の説明、
始められた。 教授の説明、ガチャンの音で中断された。 一人の学生、

プレパラートの資料、床に落としたのだ。 A助教授、そこへ行ってガラスを
拾った。


アーア君いい! やって来れたなあ。 これ三週間の胎児の、前頭断の標本
だぜ。 この頃は胎児の標本、滅多に入らないんだ。 一番壊して欲しく無
い標本、壊されたよ。 まったくもう!

ワシ見てるとA子、何の反応も示さない。 ワシへの因縁。 イジメのパターン。
不謹慎は、客観的評価で無い。 とに角、目的の相手に、ダメージを与える。

卑しい行為だ。 こんな風に明海大歯学部にも、イジメは有る。


ただねえ諸君、イジメの事例を観察すると、そこには必ずイジメる側の、
肉体的優越が有る。 国家で言えば、軍事力だ。 イジメられて自殺した子、

みんな肉体的に、劣勢である。 いまだかって、極真館の猛者がイジメに会っ
た話、聞いた事が無い。 イジメで自殺の子、必ず、肉体的に劣勢な子。


ワシとA子、素手で喧嘩すれば、勝負に成ら無い。 ワシの勝ち。 刃物使っ
ても、ワシの勝ち。 飛び道具なら判らんが、肉体的には、勝負に成ら無い!


 *     *     *


A子、小柄で華奢な女の子。 彼女の顔(人相)を観ると、
こんな可愛い丸顔の子、何んでこうも、押しが強いんだろうと、不思議に
なる。

ちょこんとした小さい鼻。 これがもし、ワシ鼻なら、
まだしもだ。 こんなやさしい鼻して、何んで、かくも強気か? 今もって
良く判らん。 強いて言えば、我がままそうに結ばれた、小さ目の唇か?


何度も、何度も言いますが、この子達は普通に、心のままに生きてるだけ、
本人には、嫌がらせしてる気持ち、全く無い。 あくまで普通に、生きてる
だけ。

だから彼女ら、みんな、わたしを避ける、何故だろうと、悩み事相談へ
行ったりする。 横で見てりゃあ、当然と思われる事、(仲間を見学さ

せて、一人悦に入っているような事)をしてても、彼女ら、悪いと思わん
のね。



イジメで自殺者が出ても、加害少年は悪い事した意識、少ない。 会社じゃ
オジンが、イジメの標的にされても、イジメてる女子社員、むしろ会社の
為に、良い事してる気分。

実習室でA子がワシを、イジメようとしたのも、現代の若者の精神構造から
言えば、普通の行為の範疇(はんちゅう)だ。 ま、ワシが待ち構えていた

から、飛んで火に入る夏の虫に成ってしまったのは、残念でしたがね。


どんな時代にも、底意地の悪い人、居るもんだ。 優しく寛容な人も同じ位、
居る。 ワシの研究では、この差、幼児期の環境に有る。

ワシをいじめ様とした女の子、大変な金満家のお嬢さま。 これを見ても日本
人、育児、下手やなあ! と慨嘆される。


何か、こいつらを見とると、その辺の貧乏人に、大金を持たせただけ。 みた
いなのが、多いぞ。

現代日本の金持ち、 文化が無い。 金持ちの意味を、解かっとらん!
日本人には、金持ちの育児と、金持ち教育のノーハウが、存在せんのだ。


金持ち、三代続かずを、地(じ)で行く輩(やから)が、結構居る!
ワシの、英才教育の時代を、読め!


 *      *     *



こんな風に、誰にもさせず、自分一人でしたがるのが、普通で有る
ならば、止めさせようとするワシ、風車に突撃するドンキホーテか、流れ
に竿さす、ひねくれ者に該当する。

一人でしたがる王族との戦い。 臨床実習の終りまで続いた。 最後、
つくづくと嫌になり。 かと言うて、彼らの欲しいままにすると、
腹が立ち、怒鳴りつけたくなるし。


人間、二つの時代精神に生きるの、不幸だよ。


若い連中、生まれた時から、こんな世界に居たので、これが普通の世界、
なんだろうけど、こっちは、みんなに見学させて、一人で実習してる女の子

奇怪だよ! なんで止めないのか、不思議で仕方無かった。


 *     *     *


次の段は早くも第三章だ。 卒業まで続いた、王族たちとの戦いを、マトメて
記す事と、しよう。 では。



*     *     *


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